階段にはドラマがある
階段というものは、実用的な点から考えると、高さの異なる床をつなぐ通路の一種に過ぎませんが、階段を登り、下りて行く時、人は誰しも、ただ通過するという以上の何か濃厚な感情を味わうのではないでしょうか。
階段が映画にしばしば使われるのもそのせいかもしれません。
忘れられないシーンといえば、「風と共に去りぬ」。とんでもなく大きく広い階段を余すことなく利用するシーンは印象的。
また、「グレーン・ミラー物語」で主人公のミラーが成功してから住む大きな屋敷で行われる結婚記念日のパーティーでの階段シーンも印象的。この日、グレン(ジェームス・スチュアート)は、玄関ホールに楽団全員を揃えてお祝いの準備をします。が、妻のヘレン(ジューン・アリスン)はそれを知らず、外出のために寝室で着替えをしている。
階下ではグレンと両親が「まだかぁ~~~?」って催促。やっとヘレンが階上に現れるとグレンの合図で楽団が演奏を始める。初めは驚いていたヘレンが、嬉しさに微笑んでフレアスカートをひるがえして階段を降りてくる。その軽やかな足取りは、まわり階段と吹き抜け空間によって華やかに引き立てられています。
アメリカ映画ではこのようなシーンが多く、階段は妻の”登場”を引き立てる絶好の背景となっているんです。
パジャマで降りる階段は家の奥にあるべき
これらの階段はいずれも玄関ホールにあって、吹き抜けがホールと一体になり天井が高い堂々とした住まいです。
主人公の登場や退場の劇的な場面を演出する上でとても効果的に使用されることが多いのです。
しかし、こうした欧米式の階段を玄関正面に作ることは避けたほうが良いですね。
それは、「上がり框」の章で記してことと同じ理由からです。
>>続きます。