パジャマで降りる階段は家の奥にあるべき
それは、「上がり框」の章で記したことと同じ理由からです。
つまり、欧米人と日本の住まいにかんする考え方の違い、特に内と外、個室と共同空間に対する感じ方の違いに関係すると思うのです。
欧米では玄関ホールに階段があるスタイルが多いですね。それは、出入り口から個室への動線えおなるべく早く分岐してしまうという個室の独立性を優先するプラン(計画)考え方が基本にあることに気がつきます。つまり、こういう階段の位置付けは、一人前の大人になった家族が他の家族と顔を合わせずに自室へ直行したりするのに便利なのです。
また、欧米では仕事から帰った亭主や夫人が帰宅して、まず着替えたい時にリビングやダイニングでそのまま下着姿になるのではなく、自分の部屋や寝室で着替えたいと思います。リビングやダイニングを通らず、直接自分の部屋や寝室に行くことができるように階段はその役目をする。
ですから、玄関ホールから二階にある寝室に直結する階段が便利になってくのです。そして、普段着でも一応きちんとして格好になって階段から降りてくるのです。
しかし、男どもが家の中でどんな格好をしていても許される日本では、二階から玄関にまっすぐ降りる階段を作ると、休みの時など亭主がパジャマ姿で寝室から降りてきて玄関の来客と鉢合わせになることもありうるのです。また学校から帰ってきた子供が親の顔も見ずに二階の子供部屋にいってしまいやすいなど都合が悪いのです。
そんな理由から日本では玄関に向かって背を向ける階段にして、踊り場から玄関を望める吹き抜けか、あるいはもっと奥に追い込んで、二階の子供の気配が階下に伝わり、「ごはんですよー」と呼びかける声が階上に届く位置に吹く抜けを設けるのが妙案となるのです。
>>続きます。